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経営者がAIで作り始めて、信頼を失い始めてる

経営者がAIで作り始めて、信頼を失い始めてる

経営者のAI活用がPMとの新たな摩擦を生み、組織の生産性を低下させる。

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近年、経営者がAIツールを駆使し、自らプロダクトのモックアップ作成や実装に深く関与するケースが増加しています。これはAIの肌感覚を掴み、顧客価値への感度を高める上で有効な側面もあります。

しかしその一方で、PM(プロダクトマネージャー)との間で新たな摩擦を生み出しています。経営者からの「メテオフォール」的な指示は、PMの業務を圧迫し、チームの士気を低下させる原因となりかねません。

本記事では、この新たな課題の背景にある市場の変化を分析し、PMが経営者のAI活用と建設的に向き合うための具体的なアプローチを提案します。

POINT 01

経営者のAI活用がPMにもたらす摩擦

経営者がAIで作成したモックアップをPMに持ち込むことで、現場では以下のような問題が生じています。

  • 「メテオフォール」型開発への回帰: 経営者の指示が一方的に降りてくるため、プロダクトチームが単なる手足となり、アジャイルな開発体制が損なわれる。
  • 棄却案の再浮上: 過去に検討し却下されたアイデアがAIによるモックアップと共に再提示され、PMは再説明の手間と時間的負担を強いられる。
  • PMの心理的負担: 相手が経営者であるため雑に扱えず、丁寧な対応が求められる一方で、本質的でない議論に時間を費やすことへの不満が蓄積する。
  • 議論の巻き戻し: 既に解決済みの問題や方向性が蒸し返され、議論が前に進まず、余計な往復作業が増加する。

POINT 02

経営者を突き動かす市場の非連続な成長要求

経営者が自らAIを活用し、非連続な打ち手を模索する背景には、現在の市場環境における外圧が大きく影響しています。

資本市場は、かつてないほどの高い成長角度を企業に求めています。特にAIの登場により、調達後の期待値やエグジット時の時価総額、途中過程のトップラインの上げ方など、あらゆる指標において異次元の成長が求められるようになりました。

この高いハードルは、従来の計画では達成が困難な非連続な成長戦略を経営者に迫ります。そのため、経営者はAIを駆使して自ら突破口を探し、新たなプロダクトアイデアや実装方法を模索せざるを得ない状況にあります。

POINT 03

現代スタートアップの二極化する戦略

プロダクト単体での連続的な成長だけでは市場の期待に応えられない現状で、スタートアップは主に以下の二つの戦略に集約されつつあります。

M&Aによるロールアップ戦略

  • 類似企業を買収し、PMIを通じて事業規模を急速に拡大。
  • デジタルネイティブ化でコストを削減し、トップラインを非連続に成長させる。
  • 自社プロダクトのみでは達成困難な成長曲線を実現。

エンタープライズ向けAI BPO戦略

  • 顧客を大企業に絞り、高単価なサービスを提供。
  • プロダクト提供だけでなく、コンサルティングや実動支援(人×AI)で深く関与。
  • 高い単価を積み上げ、ARPU(ユーザーあたりの平均収益)を最大化する。

POINT 04

PMが経営者のAI活用と建設的に向き合う方法

経営者のAIによるプロトタイプ作成を単なる「めんどくさい事象」として処理するのではなく、チームの成長機会に変えるための具体的なアプローチを提案します。

  1. 01

    提案の背景を理解

    経営者のプロトタイプ自体を否定せず、そのアイデアの背景にある不安や仮説を抽出する。なぜ今それが気になったのか、本質的な課題は何かを深掘りする。

  2. 02

    検討済み案の効率的な処理

    既に検討済みで却下された案であれば、その時の棄却理由を簡潔なドキュメントにまとめ、会話ではなく共有することで説明の手間を省く。

  3. 03

    中核業務への誘導

    代替案を提示する際は、経営が今集中すべき中核業務に接続して返す。経営者にはプロトタイプ作成よりも重要な役割があることを明確に伝える。

  4. 04

    学習機会への変換

    経営者のプロトタイプをチームの学習と意思決定の質の向上に繋げる機会と捉える。チームで分析し、より良い方向へ昇華させるプロセスを構築する。

POINT 05

経営者のAI実装への過度な関与が招くリスク

PMが経営者のAI活用による摩擦を適切に処理できない場合、組織全体に以下のような深刻な悪影響が及ぶ可能性があります。

  • チームのモチベーション低下: 経営者が実装に深く関与しすぎると、チームは指示待ちになり、自分たちの役割や貢献意義を見失い、士気が著しく低下する。
  • 採用・カルチャーへの悪影響: 「結局経営者が作るなら自分たちは何をするのか」という不満は、優秀な人材の離反を招き、健全な開発カルチャーの醸成を阻害する。
  • 長期的な生産性の低下: 経営者が短期的なプロトタイプ作成に時間を費やすことで、本来注力すべき経営戦略や組織全体の最適化がおろそかになり、結果的に長期的な生産性が損なわれる。

TAKEAWAY

経営者のAI活用は一時的なトレンドではなく、PMの役割と組織構造に長期的な変革を迫る構造的変化であり、PMには建設的な対応が求められる。

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